INTRODUCTION

――午後8時。渋谷地区のウエストサイド。
インテリ系非行少年グループと称される、鳳凰学園高校の『セブンスヘヴン』とバイオレンス系非行少年グループと称される、獅子堂高校の『ルートセブン』は常にウエストサイドの王座を巡って対立していた。
争い事が絶えない彼らだが、決して悪害だけの存在では無かった。
なぜなら、彼らは自分達が生まれ育ったこの渋谷地区を誰よりも愛しているからだ。
この街で悪意のある行動をとるほとんどの若者は地方出身者であり、マナーもモラルもない輩に対して容赦はしない。
ファーストフードのゴミだってちゃんと分別して捨てるのが地元が渋谷地区である彼らなりの流儀なのだ。
事実、この二大勢力の影響力があまりにも大きいが故に、街の秩序は保たれていると言っても過言ではなかった。
そんなある日、『スラッシュ』という脱法ドラッグが渋谷地区のあちこちで横行しているという黒い噂が飛び交う。
これはもちろん『セブンスヘブン』『ルートセブン』両グループにとっては由々しき事態。
決して放っておける事案ではない。
彼らはそれぞれのグループ独自のルートを使い、ドラッグに関する情報を集める。
すると、ドラッグの出処は街外れにあるCLUB「I’m」だという事を突き止める。
得た情報の中で、なにより彼らを憤慨させたのは、このドラッグ問題の主犯が、『セブンスヘブン』であり『ルートセブン』だという街の噂。
渋谷地区の若者達の間では大きな話題となっていた。金に目が眩んだ両グループが競うように売買を行っているというのだ。
しかし『セブンスヘブン』の調べでは、ドラッグマーケットの片棒を担いでいるのは『ルートセブン』だと確信していた。
逆に『ルートセブン』の調べでは、ドラッグマーケットの片棒を担いでいるのは『セブンスヘブン』だと、こちらもかなり有力な情報を掴んでいた。
お互いに相手グループを疑い、罵り会い、睨み合いはピークへ。もはや2グループの抗争は逃れられない状況だ。
さらに不可思議な事件も起こった。『セブンスヘブン』ではモモタロウが、『ルートセブン』ではアカネが、それぞれ行方不明になっていたのだ。
相手グループに対する疑心暗鬼は深まる一方。やがてお互いに対する怒りは抑えきれない状況へ。
中には荒ぶる気持ちを抑えきれず個人行動を起こし、トラブルに見舞われるような事態も。こうなったらもう止められない。
駆り立てられた感情と、行方不明の仲間を思う不安な気持ちが混ざり合い、かれらは自分達の本質すら見失ってしまっていた。
状況はますます悪化の一途を辿る。
ウエストサイド問題を担当する警察官の木村も、ピリピリとした独特の緊張感のようなものを感じとっていた。
とある廃工場。 いよいよ2グループ間の抗争が始まった。血で血を洗う闘いは止まる事を知らない。
両グループともに力尽きたと思われるその瞬間、工場内にゆったりとした拍手の音だけが響き渡る。
「いやぁ、素晴らしいショーを見せてもらいましたよ。おっと、これは失礼。私の名前はJOKER。どうぞお見知りおきを」
男は、芝居がかったように名乗ると、同時に胸に手を当て、まるで執事のような素振りで、うやうやしく頭を下げた。
只者では無い雰囲気を醸し出しているJOKER。その背後には、たくさんの彼の手下達が控えていた。
その雰囲気からして間違いなく、カタギではないのが見て取れた。
そしてその中に、モモタロウとアカネの姿を見つける。思わず仲間の名を叫ぶ両グループ。しかし二人はぐったりとしていた。
すでに力尽きている両グループ。立ち向かおうとするが、すぐに取り押さえられてしまう。ここでJOKERから衝撃の事実が伝えられる。両グループともにJOKERに騙されていたのだ。
ここまでのあらすじの全てを、舞台袖から糸を引いていたJOKER。
さらにJOKERは一つの条件を提案してきた。
それは全員がJOKERの配下となり彼のビジネスの二本柱になって欲しいというもの。
もちろん金銭的な見返りは大きい。さらにここウエストサイドだけでなく、渋谷地区全体の勢力図も思いのままだという。
しかし、それは彼らにとってとても承服できるものではなかった。
ゆっくりと立ち上がり、手と手を取り合い、一時休戦を誓う彼ら。
こうして、打倒JOKERの物語が始まる───。
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